<証書貸付をメインに融資する理由>
銀行取引コラムVol.5の「融資形態の種類」で少し触れましたが、最近の銀行の動きとして、証書貸付をメインに融資を 行っているといえます。
なぜ、銀行は証書貸付をメインに融資しているのでしょうか?
その理由として、次のようなことがあげられます。
証書貸付の場合は、連帯保証人に借入れ内容(金額・借入期間・レート・約定日・ 使途など)について銀行員から説明があり、その説明を理解すればその意思表示 として金銭消費貸借契約証書(銀行では略して金消(キンショウ)と呼びます。)を 差し入れてもらうのです。
一方、手形貸付の場合は手形に保証人の署名は基本的にはいりません。
例外としては 手形貸付の場合でも保証協会対応の貸付では連帯保証人にも手形に署名捺印をして もらう場合もありますが、基本的にはいりません。
しかし、保証人の署名が要らないために、手形貸付の場合では以下のような問題が 起こるのです。
銀行は、最初に融資契約を締結する際には、融資基本約定書の銀行取引約定書と 連帯保証人の保証約定書という契約書を交わしますが、銀行は借入をする度に 印鑑証明書を毎回保証人からもらっていたのでは事務作業が煩雑になるので、 保証約定書を差し入れてもらう際に「包括」という形で約定書に署名捺印をして もらいます。
「包括」ということは会社が借入れる全ての借金という事になります。
社長やその奥様や子息などの家族が包括約定書を差し入れるのであれば、まだ理解は 出来ますが、第三者でも意外に包括約定書で差し入れている場合が多いのです。
手形貸付を受ける場合においても基本的には保証人全てに借入れをする事実を 全保証人からの合意が無ければ借入れは出来ませんが、「包括」という形の 保証約定書を交わしている場合、実務においては全保証人に意思確認をできて いないのが実際ではないでしょうか?
ですから手形貸付メインで借入れをしている企業が倒産した場合に第三者保証人から このような苦情がくるのです。
「5本借入れがある内の3本については納得しているが、残りの2本については 借入の事実すら知らない!」 と言った内容です。
このような苦情が裁判に発展し、保証人の意思確認を怠ったとして、銀行側が 敗訴した事実があるため、銀行は手形貸付を止める方向にあります。
証書貸付で保証人に借入れの詳細の説明をして納得して借入れをしてもらえれば、 万が一の事があっても銀行は不利な立場にはなりません。
また、保証約定書を締結する際には「包括」以外には「限度額」保証という形態も あります。
これは読んで字の如く設定した保証額までの保証という事です。
現状は、銀行も裁判で負ける場合があるので、各保証人の保証能力に見合った保証を してもらう見地から過去に差し入れた保証約定書を差し替えしている銀行もあります。
この保証約定書というのは継続的な融資を受ける場合に銀行に差し入れるものであり、 単発の融資やこの融資以外には今後も借入れをしないという場合において保証約定書は 差し入れしません。
このような場合は、融資の形態もまず手形貸付はしません。
証書貸付の形態を取って、保証人に印鑑証明書を差し入れて金銭消費貸借契約証書に 署名捺印して融資をするのです。
もしかしたら、この読者の皆様の中にも「包括」の約定書で知らないうちに 手形貸付の保証人になっていたなんていう事もあるかもしれません。
事実確認を することをお勧め致します。
次回は短期運転資金のチェックポイントについてお話しします。
《無料メルマガ『今日から使える銀行取引&リスクマネジメント入門』より抜粋》
